「餃子だよ。」の素材を提供
原谷農園
原谷 清作さん
北見市留辺蘂町。大雪山の麓、標高500mの山の上で農業を営む原谷清作さん。育てているのは、白菜やキャベツ、ニンジンなど。抗酸化成分を通常の2倍以上含むニンジンを栽培する農家として、全国から熱い注目を浴びています。道東製めんとの出会いはおよそ3年前。以降、「餃子だよ。」に使うニンジンを卸すほか、「食べ物の大切さ」を広める活動に力を入れています。
長持ちさせるため。試行錯誤の結果生まれた抗酸化力の高さ
始めから抗酸化成分の高いニンジンを作ろうと思っていたわけではありませんでした。元々この土地の粘土質で堅い土質は、ニンジンを作るには不向きだった。だからどうにか太く育てよう、収量を確保しようと化学肥料を使っていたんです。今思えば、それが畑から養分を奪って、痩せさせていたんでしょうね。当時は遠く福岡の市場に卸していたのですが、ある時から、出荷して店に並ぶまでに融けていたり変色していたりと傷みが目立つようになっていきました。
これは大変だと、あらゆる手を考えました。農薬や化学肥料を変えたり、冷蔵庫を導入し出荷前に予冷してみたり。ところが一向に解決せず、そのうち「作物の作り方自体が問題なのでは」と思うようになりました。作物そのものの免疫力が低下していて、病気にかかっているのではないかと。そんなときに出合ったのが、「土の中の微生物を増やす」という考え方。微生物を介して土の中の養分をニンジンに取り込ませる。この方法で健康的に育てられるのではと考えたんです。
早速、土の中の微生物を意識した栽培方法を行ってみました。微生物を多く含む肥料や、微生物のエサとなる堆肥や腐葉土、加えてミネラル分を畑に撒くようにしたんです。すると、だんだんとニンジンの傷む割合が減り、それどころか長持ちするようになりました。
しばらくして、研究機関にニンジンの成分を調べてもらう機会がありました。その結果、「抗酸化成分が通常の2倍含まれている」と。こうして、傷みににくい作物を作るために微生物を増やそうと試みた結果、抗酸化力の高いニンジンが出来上がったというわけです。
微生物の力を借りて、作物を健康的に育てる
大切にしているのは、作物そのものを健康的に育てること。とにかく急がない。早く育てようとすると、化学肥料を使って一度にたくさんの栄養を与えることになる。そうすると、作物は一気に太ってしまう。それは不自然なんですよね。自然に従ってゆっくり育てれば、土の中のすべての養分を吸収し、作物は健康に育つと思います。そうやって土の力に応じた生育を進めていくべきです。
そもそも微生物が活発に働く畑には肥料や農薬はそこまで必要ではないと考えています。今、うちのニンジンは有機肥料以外の化学肥料や農薬はごくわずかしか使っていません。本当は土の栄養だけで育てたいのですが、それはまだまだ先の話になりそうです。3ミリほどの土を作るのに百年単位の年月を要すると言われているほどですからね。
自分の代では実現できないことかもしれませんが、少しずつ土中の微生物を増やし、畑の土壌環境を整えていきたいと思っています。
体の健康を維持するために大切なこと
6年ほど前に全国テレビでうちのニンジンが紹介されて以来、その抗酸化力の高さが一躍有名になり、全国各地から注文が来るようになったんです。それから実際にニンジンを食べた方々から「アトピーが直った」「ガンがなくなった」「糖尿病が改善された」などの声が寄せられるようになって。増田さん自身も末期がんのお母さんを食べ物で治した経験があり、抗酸化力の高いニンジンに興味を持って訪ねて来てくれたんです。そこで「食べもので体の健康を保つ」という話で意気投合しました。
「人間の健康は腸内の微生物の働きによって保たれている」という話はよく聞きますが、それは畑の土にも通ずるところがあります。微生物が活発に働く土で健康的に育った農作物は免疫力が高く、病気になりにくい。そういった作物を人間は口にすることで、健康になるのだとニンジンづくりを通してつくづく実感しました。やっぱり何といっても食べ物が大切。その大切さを食べ物を作る“生産者”という立場から、消費者の方々に伝えていけたらと考えています。