学校給食の麺に使う小麦を提供
アグリシステム株式会社
伊藤 英拓さん
1988年の創業以来、オーガニックを広めるため尽力してきたアグリシステム株式会社。オーガニックの小麦や豆類などをはじめとした穀物の仲卸や、オーガニック栽培技術を伝える取り組みなどを精力的に行っています。現代表の伊藤英拓さんが会社を引き継いだのは2019年のこと。以降、経営理念として掲げられているのは「未来の子どもたちのために」。道東製めんのビジョン「次の世代に良い食生活を」と深く通ずるところがあるように感じます。共通して持つ未来への思いを聞かせてもらいました。
経営理念「未来の子どもたちのために」を決めた経緯
自分が会社を継いだタイミングで、元々の創業理念は引継ぎながらも新たな軸になるような経営理念をつくろうと思いました。そんなとき、ある人から「年寄は知恵、子どもは未来」という言葉を教わって。とても豊かな考え方だと感銘を受けました。それをきっかけに、「自分はどう生きたいか、会社をどうしていきたいか」を考えて、少しずつ言葉に落とし込んでいったんです。
オーガニックの普及も、経済活動のためだけにやっているわけではない。それに「今だけ」良ければいいわけじゃない。今の子どもたちが大人になったとき、そしてそのずっと先にも良い社会を届けていきたい。そんな風に広く長い視野を持ちたいという思いで「未来の子どもたちのために」という言葉に辿り着きました。
これからは食の重要性がもっと高まるべきだと思っています。「オーガニックは値段が高い」と言われてしまいそうですが、一概にそうとは言えません。以前オーガニックの食材を使って学校給食を実施したときも、規格外を活用することや、地元や生産者から直接食材を調達し、材料費・輸送費を抑えることで慣行の食材と近い予算でできました。重要なのは生産者と、加工流通業者、そして消費者が近い距離にいること。対話を通して相互理解を深めること。たとえば、オーガニックは高いと思っている人でも背景やおいしさを知れば、「こんなにおいしくて、安心安全な野菜がこの価格なんだ」と意識が変わるかもしれない。効率や経済性だけを求める大量生産大量消費の社会では、あらゆる繋がりが分断され、均一化に向かう傾向があります。そして私はそれが様々な社会問題や健康被害の原因となっていると認識しています。オーガニックは自然や人とのつながりを大切にし、多様性や個性を尊重する価値観であり、選択肢であり、生き方なのです。
学校給食を通して子どもたちに安心でおいしい食材を提供
道東製めんとの付き合いは、増田さんがオーガニック農業に興味を持って、「具体的な栽培方法について話を聞きたい」と知り合いを通じてお声がけいただいたのが始まりです。元々アグリシステムにはオーガニック栽培技術を普及するための「フィルドマン」と呼ばれる農業コンサルティングがいますし、「うちが伝えられることなら何でも」と付き合いが始まりました。
現在は道東製めんさんが卸している芽室町の学校給食用の麺に私たちの小麦を使っていただいています。生産者の顔が見える北海道産小麦3種をブレンドした「北海道ゆめきらり」という製品で、グリホサートフリー、ネオニコチノイド系農薬フリー。子どもたちが日々食べる給食に使うものですし、より安全性の高いものをという思いで選んでいただいたのだと思います。麺が給食に出る日は現在、週に一度ほど。地元の子どもたちが通年で私たちの小麦を口にしてくれている。それは非常にうれしいことですよね。
オーガニックを扱う製麺会社として。道東製めんに望むこと
オーガニック食材は、できるだけ遠くに運ばずに地元で消費できればと考えています。そのために地元のメーカーさんにもっと使ってもらいたいので、道東製めんさんのようなメーカー企業の存在はとてもありがたいです。
アグリシステムでは、オーガニック栽培技術を広めていくための生産者向け勉強会を定期的に開いているのですが、道東製めんさんにはそういった生産者が集まる場にオーガニック農作物などを扱う企業としてぜひ参加してもらいたい。オーガニックを広げるためには育てる人、作る人、食べる人、みんなが一緒になって対話し考えていくことが重要です。作ったは良いけど、「それ、買ってくれるの?」という心配が生産者側としてはあるんですね。そこで実際にオーガニック農作物を使っている道東製めんさんにどんな思いで使っているのかを話してもらったら、生産者は不安を拭えるかもしれないし、モチベーションにも繋がる。消費者にとっても「どこで手に入るのか」という疑問・悩みに応えることができる。そんな風に、みんなが良い形になれば良いなと思っています。
製麺業界は、ここ数年でやっと「国産」が注目されるようになってきて、オーガニックが広まるのには、正直まだ先は長いと思っています。そこで先駆けて取り組んでいただけることはすばらしいことだと思う。これからもぜひ、先陣を切って推し進めていただきたいです。